「で、でも…この人は自分の会社の保身の為に下請け業者に無理させたんですよ?施工スケジュールも人件費も有無を言わせず。それでお父さんは、自分は休みも取らず他の作業員に休みを与えて、挙句の果てに体調壊して…ちゃんと休めていれば事故になる事もなかったかもしれないのに」
私は居ても立っても居られなくて、二人の会話に口を挟んだ。
私がここで出て行くのは間違ってるかもしれないけど、それでも止められなかった。
「それも誤解なのよ…谷本さんは……「「奥さん!!」」
ずっと黙っていた父親が、突然お母さんの言葉を遮った。
一気に視線が父親に集まる。
「それ以上は言ってはいけない」
「…いいえ、話をさせて下さい。大輝はもう立派な大人です。すべてを知る権利があります。この子はどんな話でも受け止められる強い心の持ち主です。あの人の息子ですから」
お母さんの言葉に、父親は何も言えなくなったのか口を閉じた。

