「は…?母さん…こいつが何したのかわかってるよな…?こいつは親父を殺したんだぞ…」
大輝は信じられないと言わんばかりの表情と震える声で、お母さんをジッと見つめる。
するとお母さんは「…それは…違うわ」と弱々しい声で話し始めた。
「あの事故は不運な事故。谷本さんのせいじゃないのよ」
お母さんはお父さんのお墓まで残り数段の石段をゆっくりと登る。
そして私達の横をすり抜け、お父さんのお墓の前で立ち止まった。
その横顔は愛しさと辛さが入り混じって、私は何故だか泣きたくなった。
「あの事故の前日、お父さんと電話したこと覚えてる?」
「…ああ」
「お父さん、子供達を最近何処にも連れて行ってあげれてないってずっと気にしてたの。大輝と琴音はそれでも全然文句を言わないし。だからお父さんはそんな二人にご褒美だってテーマパークのチケットを買ってね…二人には当日まで内緒だぞって幸せそうに笑ってたわ」
お父さんとはお会いしたことはないけど写真や大輝の思い出話を聞いていたから、お父さんの幸せそうな笑顔は安易に想像出来た。

