君のいる世界





二人はそこで偶然会ったような雰囲気じゃない。


父親の手には水が入ってるであろう桶とお供え用の花束。


お母さんの手には線香と自分の鞄だけ。




普通、別々で来たならお母さんも花束を持ってるはずだよね?




それに、旦那さんの事故の原因を作った人と偶然会ったとはいえ、そんな風に隣りを歩いて一緒にお墓参り出来るものなの?


それとも、私の考えが子供なだけ?


私なら…例え事故だとしても、一緒にはいたくない。




隣りに並ぶ大輝は強く握った拳を震わせ唇を噛み締めている。


大輝も、多分私と同じように思ってるんだと思う。


自分の母親と世界で一番憎い相手が、一緒にお父さんのお墓の前で肩を並べるなんて…


許せないに決まってる、よね…





「何とか言えよ…母さん!!」



怒気を含む大きな声に、私とお母さんは首をすくめた。