青いカシミヤのマフラーを墓石にふんわりと巻くと、それが濃い灰色の墓石に冴えて、まるでお父さんが笑って喜んでいるように思えた。
この街の冬は、海沿いなだけあって地元よりも寒い。
さっきから冷たい海風が露出した頬を刺していた。
でも、このマフラーがあればもうお父さんも寒くないはず。
お父さん。
風邪、引かないように気を付けて下さいね。
そして、いつまでも大輝とご家族を見守っていて下さい。
「ところで、さっきの話だけど」
「さっきって?」
「俺に見惚れて何考えてたんだよ?」
「…っ!!」
大輝はまたしてもニヤッと口角を上げて、獲物を狙う猛獣のような目で見てくる。
その瞳の奥はキラリと光り、私を捉えて離さない。
上手く話を逸らせたと思ったのに…
ホント、意地悪過ぎだよ…
「まさか、俺から逃れられるとでも思った?」
やっぱり彼は私より一枚も二枚も上手。
私みたいな弱いのがライオンに狙われたところで逃げれるわけがない。

