気付いた時には時すでに遅し。
会長は私が顔を逸らせないように顎に手を添えてグイッと持ち上げる。
「誰がそんなに麗奈を興奮させたんだよ?」
「…っ……」
会長の瞳の奥がキラッと光り、口元に魅惑的な笑みを浮かべる。
私は思わず息を呑み、心臓が鷲掴みにされたようにギュウッと締め付けられて苦しくなった。
「言えよ。眠れなくなる程、誰を想ってたのか」
「…い…っ、意地悪……わかってるくせに」
「ふっ。それ、褒め言葉として受け取っておくよ」
張り裂けそうなぐらい高鳴っている心臓の音が頭の中に響く。
やがて、会長はゆっくりと顔を近付けてくる。
唇が重なるまで、あと10センチ…
5センチ…
3センチ…
2センチ……
「…っ、大輝…」
私は喉の奥から声を絞り出した。

