君のいる世界





私達の目の前で足を止めた女の子は、幼い頃の私にそっくりだった。




ううん、そっくりなんてもんじゃない。


この子は私自身。




そうか、ここは私の夢であって過去なんだ。


古い記憶過ぎて忘れていたけど、4歳ぐらいの時に両親と柳田一家とトミさんとここにキャンプしに来たんだっけ。


まだ楽しかった頃の思い出。




でも、この男の子は誰だろう…


康君とは歳が合わないし、他にも誰かいたっけ?




『ねぇ、僕の名前は何ていうの?』



私は男の子と同じ目線になるようにしゃがんだ。




『僕の名前はーーーだよ!』



『え?』



『だから、ーーーだってば』




大事な所で男の子の声に靄が掛かったように聞こえにくくなる。


そして、右耳にボワーンと空気が振動しているような耳触りな音が響き、私は手で右耳を塞いだ。