家に入ると、予想通り祖母は鬼の形相で玄関先で待ち構えていた。
だけど怒られたのは、パーティーを抜け出した事と帰りが遅くなった事だけ。
お見合いが破談になった事は一切お咎め無しで、祖母は「疲れたからもう休むわ」と言って客室に入って行った。
私は拍子抜けし、ぽかーんと薄く口を開けて祖母の背中が見えなくなるまで佇んでいた。
するとトミさんが私の肩にぽんっと手を置いて、周りに聞こえないように小さな声で言った。
「小出社長と直幸氏が、破談になったけどこれからも宜しくと仰って、今回の件は円満解決したのよ。それどころか社長も婦人も谷本財閥を気に入って下さったみたいなの。だからお祖母様は麗奈さんを叱れなかったのよ」
私は直幸さんの言葉を思い出した。
“この場は俺が収めておくから…最後ぐらい、俺にカッコ付けさせてよ”
そっか…
彼が言葉通り円満解決に導いてくれたんだね。
ホント、カッコよ過ぎだよ…
直幸さんには私より素敵な女性がきっと現れる。
私は直幸さんの幸せを願って、その日は眠りについた。

