「ねえ、康君が知ってるのはそれだけ?他に何かあったんじゃない?」
「他にとは…?私が知ってるのはそれだけですが」
「そう…ならいいの」
康君の表情に嘘をついてる様子はなく、私は追求するのをやめた。
でもやっぱり納得がいかない。
他に絶対何かある。
あんな楽しそうに笑う会長を、あそこまで冷酷な瞳に変えてしまう何かが。
その後、家に帰り部屋でくつろいでいると扉をノックする音が聞こえた。
「はい。どなた?」
「麗奈さん。宜しいですか?」
部屋の扉を開けると、トミさんが暖かいココアと手作りケーキを持ってきてくれた。
トミさんのココアとケーキはその変のパティシエよりも美味しくて、私の大好物。
「おいひぃ〜!やっぱりトミさんのショートケーキは最高!」
「ふふ。それは良かった。沢山焼いたからたんとおあがり」
甘い滑らかな生クリームが口の中いっぱいに広がる。
その柔らかな甘さが疲れた心に染み込んで癒してくれる。

