「四年前、たまたま親父に頼まれた仕事の帰りに商店街を通ったら弁当屋の前に花輪と人集りが出来てた。気になって人集りの一番後ろから背伸びして店を覗いたら、カウンターの中で接客をしてるおばさんを見つけたんだ」
康君は「驚きのあまり暫く動けなかった」と自嘲するように薄く笑った。
それからというもの、時間があれば店の前まで行ってお母さんの様子を確認していたらしい。
本当に私と会わせていいのか迷ったり会わせるタイミングを見計らってるうちに、ひょんな事からお母さんの考えを知った。
「おばさんは麗奈に借金で苦しい生活を強いたくなくて、全額返済するまで会いに行かないって決めていたらしい。その考えを俺が無視するわけにはいかなかった。だから麗奈には今まで黙ってたんだ。本当はすぐにでも教えてやりたかったけど、ごめんな」
康君はハンドルをギュッと握り締めた。
横顔をちらっと見ると、眉尻を下げて申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

