君のいる世界





するとふわっと会長の香りが鼻を掠め、私は会長の逞しい腕に包まれた。




「ったく、そんな顔すんなって言ってろ?」



硬い胸から伝わる心臓の鼓動は、私と同じぐらい速い。


いつも余裕そうに見える会長も緊張してるんだ思うと嬉しかった。




「明日は一日バイトで会えないんだ。ごめんな?月曜日までいい子にしてろよ?」



会長はそう言って私の頭をポンポンと撫でてくれた。


そして一度ギュッと強く抱き締めた後、ゆっくりと私から離れていく。


会長の温もりがなくなった途端、冷たい夜風が私達の間を吹き抜ける。




だけど、心は暖かかった。




「あ、そうだ。上着返さないと…」




私が借りていた上着を脱ごうとすると、会長がその手を止める。




「着て帰れ」



「でも…これないと明日困るでしょ?私は車だし大丈夫だよ」



「駄目。他の男に見せたくないって言ったろ?」



そう言った会長の頬はほんのりと赤く染まっている。


それが可愛くて愛おしくて、思わず笑みが零れた。