「あります」
会長がはっきりと言い切ると、私は咄嗟に後ろを振り返った。
私の中に広がった不安を一瞬で払拭してしまうぐらい優しい笑顔をしている会長に、心臓がドキッと大きく跳ね上がる。
「俺はもう麗奈を手離したりしません。絶対誰にも渡しません」
私を見つめるその瞳は、勇ましく迷いはない。
「…もし、傷付けたら俺が許さない。それだけは覚えておいて下さい」
やがて車は会長の家に着き、私は見送りのため二人と一緒に車から降りる。
琴音ちゃんは気を遣ってか、私に一言挨拶をすると先に家に入って行った。
「じゃあまた明後日、学園でな」
「うん…」
そっか…
今日は土曜日だから会長に会えるのは明後日なんだ…
想いが通じた途端、どんどん欲張りになっている自分に気付く。
まだ一緒にいたい。
本当は毎日でも会いたい。
ギュッて抱き締めてほしい。
だけど、そんなこと恥ずかしくて言えない。
甘えたいのに、恋愛初心者の私には甘え方がわからない。

