車は商店街を抜けた大通りに停車していた。


私が助手席、会長と琴音ちゃんが後部座席に乗り込む。


いつも学生で賑わっている駅前は、この時間になると大人の街に姿を変えホストクラブやキャバクラの看板が神々しく光を放っていた。




「中澤様、二三お伺いしても宜しいでしょうか?」



私と琴音ちゃんが他愛ない話で盛り上がっていると、今まで黙っていた康君が突然言葉を発した。



「何でしょう?」



「今日、ホテルでお嬢様…いや、麗奈のことを好きだと言いましたよね。その言葉に嘘はありませんか?」



仕事モードからオフモードに戻った康君は心なしかいつもより声が低い。


琴音ちゃんは康君の言葉に驚きを隠せないようで、目を見開いて二人の顔を交互に見ている。




「嘘はありません」



「麗奈は谷本財閥の一人娘です。きっとお祖母様はあなたとの事を許しません。もしかしたら別れさせようとしてくるかもしれない。それでも、麗奈を離さない自信はありますか?」



お祖母様が別れさせる?


あのお祖母様なら、谷本財閥の更なる繁栄の為にやり兼ね無いかもしれない。


私の胸に不安が一気に広まっていく。