「中澤大輝さんのお父様は、社長の大学の友人だそうです」
会長のお父さんは大学卒業後、大工に弟子入りし数年経って自立。
うちの子会社の下請けとして付き合いがあったらしい。
「他県の田舎に施設を建設する仕事を中澤様に依頼しました。その作業中に中澤様は転落して亡くなられたそうです」
「え…?亡くなった…?」
「大雨の日で救急車が来るのが遅れて…あと数分早く救急車が来ていればと、社長が仰られていました」
「そんな事があったなんて…知らなかった…」
「当然です。お嬢様はまだ小学6年生でしたから」
会長が前に一緒にいた弟さんのことを思い出す。
あんなに小さい子もいるのに…
「中澤大輝さんと何か御座いましたか?」
「…ううん。何もないよ」
言えない。
キスされたなんて…
壊すって言われたなんて、言えないよ…
でも待って…
お父さんの事は不運な事故。
会長が恨むぐらいだもん。
他に何かあったんじゃないの…?

