君のいる世界





「誕生パーティーをした谷本財閥が経営する東京cinnabar (シナバー)ホテルのcinnabarの意味は朱色。朱美さんの“朱”です。このホテルは麗奈の父親が社長になった時に名前を変えたそうですね」



私が物心ついた頃にはあのホテル名はもう東京cinnabarホテルだったけど、あれはお母さんの名前から付けてたんだ…




「それに、朱美さんの弁当屋の店名【麗らか弁当】の麗らかは麗奈の“麗”」



「あ…ホントだ…」



会長に言われるまで気付かなかった。


お母さんは家を出て行った後も私を想っていてくれたの?




「朱美さんは離婚していて俺と同じぐらいの娘がいること。麗奈の両親も離婚していて母親がいないこと。この五つを合わせると、もしかしたら二人は親子なのかもしれないって思ったんです…それに何よりも仕草とか笑い方、雰囲気がそっくりでしたから」



お母さんは私達に背を向けて夜空にくっきりと浮かぶ月を見上げた。



「…大輝君、流石ね。確かに、うちの店名は麗奈の名前から取ったの」