君のいる世界





暫しの沈黙を破ったのは、お母さんに遅れて店の奥から出て来た琴音ちゃんだった。



「きゃあ!!朱美さん、大丈夫ですか!?」



琴音ちゃんは地面に散らばった弁当を見て声を上げる。


その声に、私とお母さんはハッと我に返り絡まった視線を外した。




「大丈夫よ…」



「あ〜…靴汚れちゃってますね。ここは私がやっておきますから、靴拭いて来て下さい」



そう言って琴音ちゃんは掃除用具を取りに、再び店の奥に駆け足で戻って行った。




「朱美さんも麗奈も、とりあえず移動しましょう」



私達は会長に促されるように、店の裏にある公園に移動した。


そこは弁当屋とその隣りの建物の間にある細い道を曲がると突如現れる小さな公園。


遊具は滑り台と鉄棒しかなく、ベンチが一つと水道が設備されている。


周りは下町風情のある住宅街で街灯は少なく、すぐ裏にある商店街とは違ってシーンと静まり返っている。