君のいる世界





それから私達は忍び足で学園を出て自転車に乗り、煌めく夜の街を颯爽と走り抜ける。



「まだ時間大丈夫か?」



学園を出た時、時計は22時を指そうとしていた。




本当は駄目だけど、まだ会長といたい…


罪悪感を感じつつ、康君やトミさんに心の中で謝った。




「大丈夫だよ」



「これから会わせたい人がいるんだ」



会わせたい人?


会長は「会ってからのお楽しみ」と言って、それが誰なのか教えてはくれなかった。




やがて自転車は自分家の最寄り駅に着き、商店街に入っていく。


この時間の商店街は、大半のお店がシャッターを閉めていて日中の賑わいが嘘のように静かだった。




確かこの商店街って琴音ちゃんがバイトしてる弁当屋のとこだよね…?


会わせたい人って琴音ちゃんなのかな?




すると予想通り、自転車は弁当屋の前で停まった。


店先には以前来た時と同じように【麗らか弁当】と書かれた黄色い看板が置いてある。