君のいる世界





「あ…もしかして…」



「何!?なんか知ってるの?」



「…いえ。何でもありません」




康君は慌てた様子で口を噤んだ。




怪しい…


康君は昔から嘘を付くのが下手。


落ち着きがなくなってすぐにバレる。




「康君、お願い!教えて!?中澤大輝のこと知ってるんでしょ?」



「いえ…その…」



私は後部座席から乗り出して、ハンドルを握る康君の腕を掴む。


その途端に走行中の車が蛇行し、反対車線を走る車がププーッ!もクラクションを鳴らした。




「うわっ!お嬢様!危ないので離して下さい!!」



「嫌っ!教えてくれるまで離さない!父に言うなって言われてるなら、聞いた事黙っておくから!」




康君は私が腕を掴んでる方の手をハンドルから離し、片手で車を端に寄せて停めた。




「はぁ…わかりました。私の知ってる事はお話ししますので、お嬢様はちゃんと座ってて下さい」



康君は負けましたと言わんばかりに溜息をついた。


無理矢理聞き出すようなことをして申し訳ないと思いつつ、私は素直に後部座席に座り直した。