君のいる世界





「許せない人の娘だから好きになってはいけないの?憎い人の娘だから一緒にはいれない?それって結局は逃げてるだけじゃない!!」



山下は遣りきれない想いを吐き出すように、一気に捲し立てた。


その言葉が俺の胸に深く突き刺さる。




「麗奈はね、あなたの家族に何が出来るか、ずっと悩んできたのよ。財閥の社長令嬢っていう呪縛から解かれたいって願うあの子が、自分を縛り付けるその肩書きを利用してでもあなたの力になりたいって。その為なら復讐の道具として使われても構わないって…」



山下の目には薄っすらと涙が滲み、それが零れないように少し上を向いて唇を噛み締めている。


やがて「はぁ…」と息を付いた山下は、静かに言葉を続けた。




「いくら好きな人だからって…誰かの為に自分を犠牲にするなんて普通なら出来ない」



「……」



「お願い…麗奈を助けて…このままだと麗奈の笑顔は消えてしまう。あの子の笑顔を取り戻せるのはあなただけなの!」



山下の目から、堪えきれなかった涙が頬を伝った。


次から次へと流れるその涙は綺麗で、親友を大切に想う気持ちが現れていた。