「あのね、麗奈のことなんだけど」
山下の声は心なしかいつもより暗い。
あいつの名前が出た途端、俺の心臓が緊張と不安で激しく揺れ始めた。
「今日、ホテルで誕生パーティーが開かれるの。そこには勿論、噂のお見合い相手も出席する。あの子…今日返事するつもりよ?」
「返事?」
「結婚を前提に交際を申し込まれてる。麗奈は前向きに考えるって言っていたわ」
二学期が始まってから色んな噂が耳に入って来ていた。
でもどれが本当のことなのか、あいつの本音はどうなのか、それだけは全然わからなくて…
ただの噂だと自分に言い聞かせていたり、はたまたどこかで覚悟はしていた。
…覚悟はしていたつもりだったけど、改めてあいつの本音を聞くと心臓がズキっと痛む。
自分の女々しさが哀れで、腹立たしい。

