外に出るとスタンドの端に意外な人物が立っていた。
俺は予想していなかった展開に眉を寄せる。
それ以上に、訪ねて来たのがあいつじゃないことに自分でも笑えるほど落胆していた。
「山下…?」
「中澤さん。ごめんね、バイト先まで来ちゃって。話があるんだけど」
山下は深刻そうな表情を浮かべている。
その様子から見て、今からする話が良い話じゃないことぐらい安易に予想出来た。
俺達はスタンドの裏に移動し、壁面に並んで凭れる。
ふと見上げると、さっきまで水色だった空はすでに朱色に姿を変えていた。
この時期は空気が澄んでいて、魅入ってしまうほど夕焼けが美しい。
俺は谷本麗奈と話したあの日から、時間が出来るとここに来てぼーっとするのが日課になっていた。
何を考えるわけでもなく、周りの雑音や風を肌に感じる。
その時間だけは、俺の中にある真っ黒いモヤが晴れて清々しい気分になれた。

