あの日から数日が経った五月初旬。
未だに会長の突き刺すような鋭い目と憎しみが篭った言葉が頭から離れない。
私じゃなくて谷本財閥に恨みがあるって言ってた…
一体うちと会長にどんな繋がりがあるの?
「お嬢様、ここ数日お元気ないようですが何か御座いましたか?」
康君の問い掛けに一瞬忘れていた会長とのキスの事を思い出した。
気持ち悪かった…
何度拭っても唇から感触が消えることはなく…
私は思い出す度に唇を手の甲で擦った。
「ねぇ、中澤大輝って知ってる?」
代々社長秘書として仕えてくれている柳田家の息子なら、もしかしたら何か知っているかもしれない。
「中澤大輝ですか…?」
康君は眉間に皺を寄せながら首を傾げた。

