君のいる世界





俺は暫らくそこから動けずにいた。


あいつの泣き顔が頭から離れない。




もう、俺に向かって笑ってくれることはないだろうな。




自業自得。


俺が自分でそう仕向けたんだから…


なのに…なんでこんなに苦しいんだよ…




俺は膝の上でグッと拳を握り締めた。





それから、あっという間に数週間が過ぎ9月下旬。


俺は昼過ぎからガソリンスタンドのバイトに来ていた。


最近ミスはしなくなったものの、元気がないと皆に心配を掛けてしまっている。




こんなに自分が弱いとは思いもしなかった。





「中澤。お客さん」



夕方、休憩室で休んでいると店長がそう言いながら顔を覗かせた。



「え?俺にですか?」



「美人さん!お前の女か?」



店長のその言葉に、俺の心臓はドキッと跳ね上がった。


ここを知ってる女の知り合いなんて一人しかいない。




まさか…あいつが…?


俺は動揺を抑えるように深呼吸して休憩室を出た。