私は目を見開いた。
目の前には瞼を閉じる会長の顔。
唇に当たる温かくて柔らかい感触。
何…これ…
キスされてるの?
「…っん…ちょっ…離して!!」
私は思いっきり会長の胸を押して身体を離した。
「ご馳走様」
そう言って自分の下唇を親指でなぞる会長に、怒りで身体が震える…
拳を強く握って、今にも溢れ出てきそうな涙を堪えた。
泣かない、こいつの前では絶対に…
「ふっ。そんな目で睨まれても怖くも何ともねぇよ」
「どうして…?嫌いなら関わらなければいいじゃない!!」
「……どうしてだと?…教えてやるよ」
私の胸を突き刺すような鋭い目…
一瞬にして変わった会長の雰囲気に背筋が凍りついた。
張り付けられているかのように身体が動かない…
「谷本財閥に恨みがあるから。谷本財閥の大切はもん、壊してやるよ」
ただ心臓だけがバクバクと音を鳴らしていた。

