「お帰りなさいませ、お嬢様」
校門を出ると康君が優しい笑顔を向けてくれた。
でも、今の私は少しおかしいみたい…
いつもは安心する笑顔も、今日は胸のざわつきが消えてくれない。
私は無理矢理笑顔を作った。
そして、時刻は21時。
お風呂に入った後、部屋で教科書とノートを広げる。
だけど30分経っても教科書は1ページも進まない。
会長とのことや村内さんの言葉が頭の中をぐるぐる回っている。
すると突然、マナーモードにしていた携帯が机の上で音を立てて震え出した。
画面には直幸さんの名前と番号が表示されている。
出るかどうか迷う…
だけど30秒経っても着信は鳴り止まない。
私は一呼吸置いて、通話ボタンを押した。
「もしもし…」
『麗奈ちゃん?夜遅くにごめん。今、大丈夫?』
夏休み中に二回ほど食事した私達は、今では気さくに話せるような仲になっていた。

