君のいる世界





村内さんは私の言葉に肩を揺らした。


そして、さっきとは打って変わって弱々しい声で話し始めた。




「…直幸と私は…婚約者だったのよ」



「え?婚約者?」



予想していなかった答えに、私は驚きを隠せない。



「って言っても、小さい頃に二人でした口約束だけどね…私の父は直幸のおじさんの下で育てられて独立したの。小出家とは昔から家族ぐるみの付き合い」



「幼馴染?」



「そう。私は小さい頃からずっと好きだった。絶対私が直幸と結婚するんだって、そう思ってた。この髪は、直幸がロングの黒髪が好きだって言ったからこうやって伸ばしてる。直幸がいない学園には何の魅力もないから、こうやって目立たないように変装もして過ごしてきた」



彼女の声から直幸さんを想う純粋な気持ちがヒシヒシと伝わってくる。


私を睨む理由も、デタラメな噂を流した理由も、今ならわかる気がした。



「なのに、直幸は数ヶ月前からあなたの話ばかり。次第にはお見合いの段取りも始めて…許せなかった。私から直幸を奪って行くあなたが…」



「村内さん…あの…」



「渡さない…絶対に直幸はあなたなんかに渡さないから!!」



そう言うと、村内さんは階段を駆け下りて行った。


目から無数の涙を流して…