「待ちなさいよ!!」
地を這うように低いドスの聞いた声が廊下に響いた。
私はビクッと肩を揺らし、足を止めて振り返る。
「あなた、噂通り軽い女ね。執事といい生徒会長といい…今度は直幸にまで手を出して」
「っ!!まさか…あの噂はあなたが?」
「ふふ。そうよ。執事といちゃついてたっていう噂に尾ひれを付けたのは私」
「どうしてそんなこと…」
怒りと悔しさで握った拳が小刻みに震える。
あの噂のせいで佳菜子は…あんなにも傷付いたのに…
「目障りだったのよ、あなたが。いつも通り退屈そうに生活してればいいものを…」
村内さんは唇を噛み締め、憎悪からなのか声が震えている。
その時、私はふとある違和感に気付いた。
さっき、村内さんは直幸さんのことを呼び捨てにしてた…
「もしかして…直幸さんと知り合いなの?」

