私の一歩先で足を止め振り返った直幸さんに国道を走る車のライトが次から次へと当たる。
その頬はほんのりと赤く染まっていた。
「僕達、これが初めてではないんです。何度かパーティーで会っています」
「はい…覚えております」
「煌びやかなドレスに身に纏って顔に地位だとか金って書いてある女性ばかりの中、いつも麗奈さんは控え目で大人しい方なんだと思ってました。そんな時、パーティー会場のテラスで一人退屈そうにしているあなたを見ました」
私は招待されたパーティーに出席した時、一通り挨拶を済ませるとテラスや会場の端に避難して時間を潰すことが多い。
私にはそぐわない豪勢な会場にいると、ドッと疲れが押し寄せてきて何度も貧血で倒れそうになるんだ。
「あの日からあなたの事が気になっていました。どうしてあんな退屈そうにしているんだろうと。ずっと見ているうちに、いつしかあなたの笑顔が見たいと思うようになりました」
チリンチリーンと後ろから自転車のベルの音が鳴り、直幸さんが私を歩道の端へ背中を優しく押して誘導してくれる。
近くなった距離や紳士的な彼に、一瞬ドキッと胸が高鳴った。

