「今日はこんな形になってしまってすみません」
直幸さんは気まずい雰囲気を払拭するように口を開いた。
「いえ…」
「麗奈さんは、このお見合いのことどう思っていらっしゃいますか?」
唐突な問いに、私は思わず顔を上げる。
直幸さんは「正直に仰って下さい」と口元に笑みを浮かべた。
「私は谷本の一人娘として、物心が付いた頃からこうなることは覚悟しておりました。いつか好きではない人と家の為に結婚して跡取りを産む。それが私の運命だと…」
真剣な直幸さんに、私も正直に答えた。
「でも覚悟してたとはいえ、やっぱり気持ちがまだ着いてきていません…直幸さんはこういう結婚は嫌ではないのですか?」
「僕も政略結婚は出来ることならしたくありません。やっぱり生涯を共にするなら一番愛した女性と共にしたいですから。でも、このお見合いは僕が望んだことです」
「…え?」
私は驚いて声を上げ、その場に立ち止まった。

