君のいる世界





私はドアを背にして、その場にズルズルとしゃがみ込む。




これで良かったんだよね?


私にはお見合いを受けるしか方法がない。


高校二年でまだ親の脛を齧ってる私がもし家を飛び出しても、行く宛もお金もない。


すぐに連れ戻されるだけ。


もう三ヶ月前みたいに皆に心配は掛けたくなかった。




それに会長のことだって潮時だと思った。


好きでも、大好きでも…伝わらない想いもある。


これで会長を諦められる。


だから、こうすることが一番良い方法なんだ。




私は自分にそう言い聞かせた。





次の日から祖母は毎日家にやって来た。


マナーやら着物選びやら、隅から隅まで目を光らせて。


その度に“谷本財閥もこれで安泰ですね”と言う。




この一週間は苦痛の何物でもなかった。