君のいる世界





結局、私には何も出来なかった。


復讐の道具として使ってもらうことさえ拒まれてしまった。




ねえ、会長…


胸が痛いよ…


苦しくて苦しくて、涙が止まらない。




遠くで救急車のサイレンの音が聞こえる。


やがてガソリンスタンドの灯りが消え、壁越しに微かに聞こえた従業員の声や排気音も聞こえなくなった。




夜空には、少しも雲はかかっていないのに星が全く見えない。


昨日会長と行った街ではあんなに輝いていたのに…


昨日見た物と本当に同じ空なのか、はたまた同じ世界なのかさえも今の私にはわからない。




もうそんなこと、どうだっていい…




制服のポケットの中で、さっきから何度も何度も携帯が小刻みに震えている。


携帯を手に取ると、真っ暗な暗闇にぼわっと待受画面の光が放たれた。