「…休憩終わるから、戻るわ」
ザクッ、ザクッと砂利が軋む音がする。
行っちゃう…
このままここで別れたら、もう会長は私に笑ってくれない。
「待って!」
私の言葉と同時に、遠ざかって行く足音がピタッと止まった。
私は会長の方に身体を向けて、拳をギュッと握る。
「会長、私に言ったよね?谷本財閥の大切なものを壊してやるって。私なんてあの人にとったら大切でも何でもないけど、それで気が晴れるならめちゃくちゃにしてよ!会長が笑ってくれるなら、私どうなったっていい!そのぐらい会長の事が好きなの!!」
息継ぎもしない勢いで言い切った私は、ハァハァと肩で呼吸を繰り返す。
谷本財閥の社長令嬢、あの人の娘、私には不必要なその肩書きが会長の役に立つなら私は何だってする。
めちゃくちゃにされたって構わない。
黒い人影と砂利が軋む音が近づいて来る。
どんどん近くなる距離に心臓がバクバク音を鳴らす。

