「そうだ!ねぇ、会長の具合はどう?」
「具合ですか?元気ですけど…」
「え?でも今日、体調崩したから学校休みだって…」
「え?おかしいな…朝、ちゃんと同じ時間に出て行きましたよ?」
琴音ちゃんは「珍しくサボりかな…」と呟きながら首を捻っている。
あの会長がサボり?
やっぱり、昨日のことが原因なのかな…
「でもバイトはサボらないと思いますよ?熱があっても行く人ですから」
「バイトって?」
「そこの大通りをうちの方に真っ直ぐ行った所にあるガソリンスタンドです」
「そう…ちょっと行ってみる!バイト頑張ってね」
私は琴音ちゃんに手を振り、元来た道を走った。
「琴音ちゃん、今の子…お友達…?」
「朱美さん!あの人がこの前私を助けてくれた人です。紹介しようと思って連れて来たんですけど」
「あの子の名前…なんていうの?」
「谷本麗奈さんです。お兄ちゃんと同じ学校で、お嬢様なのに全然そんな感じしないし、とっても良い人なんですよ」
「…そう……谷本……麗奈…」
私が去った後、こんな会話が繰り広げられていることなんて知らずに。

