君のいる世界





もし昨日と同じように会長に拒絶されたり冷たい目で睨まれたら、今の私にはきっと耐えられない。


そう思うと、自然に生徒会室や会長のクラスには近付かないようにしていた。


幸い会長のクラスとは階数が違うからばったり廊下で会う事は滅多にない。




「怖いよね…私もその気持ちわかる」



「佳菜子…」



佳菜子は廊下の窓から外を見つめている。


眉を寄せて、何か辛い事を思い出しているような表情をしていた。




以前、少しだけ聞いた事かある。


幼馴染のこと。


専らのサッカー少年で無邪気に笑う彼が好きだって。


でも、高校生になってガラッと人が変わってしまった。


それ以来、佳菜子を遠ざけるようになって、今は会っても目すら合わせない。


佳菜子は前の彼に戻るように、何度無視されても逃げずに話し掛け続けているみたい。




「ねぇ、佳菜子はどうしてそんなに頑張れるの?」



「…好きだから。彼の本当の笑顔が見たい、ただそれだけ」



窓から差し込む光が佳菜子の白い滑らかな肌に当たり、まるで天使のようにぼんやりと照らす。


強い心を持った女性は何て綺麗なんだろう。


女の私でも一瞬ドキッとしてしまうほど。