学園まであと数分。
私は意を決し、口を開き掛けた。その時…
「麗奈」
康君の心なしか弱々しく低い声が車内に響いた。
突然のことで心臓がビクッと跳ね上がる
。
「っ、な、何?」
動揺を隠しきれず声が裏返ってしまう。
だけど康君は気にした素振りもなく言葉を続けた。
「一昨日…怖がらせてごめん。謝っても謝り切れない事を、俺は…」
「…どうして、あんなこと…したの?」
すると車は学園とは逆方向に曲がり、近くの公園の駐車場に滑り込んだ。
そして車体は1台の駐車スペースに対して斜めに停車した。
そこは5台しか止められない程狭く、時間が時間なだけに車は1台もない。
エンジンが停止した車内は妙に静かで居心地が悪い。
私は運転席でハンドルを両手で握ったまま俯く康君の後頭部をただ見つめた。
康君は掠れた声で呟くように話し始めた。
いつになく弱々しい康君からは、後悔の気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
「俺は…麗奈が首筋にキスマーク付けてるのを見て嫉妬したんだ。最初は冗談のつもりだった。男の怖さをわからせるだけ、押し倒すだけですぐ止めようと思った。でも、二人がそういう仲だって知って理性が崩れた」
「嫉妬って…」
私はハッとした。
いくら恋愛に疎い自分でもわかる。
もしかして康君は…

