「待てって!!」
自室のドアノブに手を掛けた瞬間、腕をパシッと音がするぐらい強く掴まれた。
「嫌っ!離して!!」
直様その手を振り払おうとしてもビクともしない。
それどころか、康君は暴れる私を抑えようと更に掴む手の力を強めた。
「麗奈!落ち着け!!」
「お願…い……ひっく…離してっ…私のことは…もゔ、放っといて…」
その場に崩れ落ちるように膝を付き、まるで子供のように声を上げて泣いた。
康君の手からするりと私の腕が落ちる。
大量の涙が廊下を濡らしていく。
「麗奈さん」
冷静さを無くした私に、優しくて安心するような温かい声が届いた。
顔を上げると、パタパタとスリッパを引きずりながら小走りで近付いてくるトミさんの姿がぼんやりと滲んで見えた。

