君のいる世界





「大学を卒業してから数年後、裕二は会社を起こした。小さいけれど暖かい会社で社員は裕二に全幅の信頼を寄せていた。裕二の会社が起動に乗り始めたと同じ頃、うちの子会社にある大きな仕事が来た」



経営が困難だった子会社に飛び込んできた大チャンス。


その仕事を成功させることは絶対に不可欠だった。


子会社の社長に下請け業者について相談された父親は、会長のお父さんに仕事を依頼した。




「もちろん友達だから依頼したわけじゃない。裕二の腕は確かだった。だから大きなチャンスをあいつの腕に任せた」



仕事は工程通りに、目立ったトラブル一つなく順調だった。


このまま予定通りにいけば一ヶ月で完了する…はずだったのにーーーーー。




五年前、悲劇は起こった。




朝からどんよりとした嫌な空模様。


天気予報は午後には徐々に晴れてくると予想していた。


だけど雲はどんどん厚さを増していき15時を過ぎた頃、大粒の雨が地面を打ち始めた。