「大輝君の父親…裕二とは大学で同じ学部だった。初めて会った日に意気投合して、毎日のように馬鹿騒ぎした。二十歳を過ぎたら裕二が一人暮らしをしてるアパートで週の半分は呑んで…それはもう楽しかった」
ふと父親を見ると、大学時代を懐かしむように遠い目をしていた。
その横顔からは、本当に大切な時間だったんだと感じられた。
「裕二は私を谷本の御曹司だからといって特別扱いはしなかった。そんな奴、あいつが初めてだった」
この人も私と同じ。
谷本財閥の御曹司としか見られていない事に悩んでいたんだ。
ううん、きっと私以上に辛かったはず。
父親は一人息子。
将来は谷本財閥のトップに立つことは生まれた時から決まっていたこと。
女の私とは、背負ってるものが違う。

