私が嫌いならどうして離婚した時、私を引き取ったの?
そんな理由…聞かなくてもわかる。
私がいなくなったら谷本財閥を受け継ぐ者がいないから。
良いとこの御曹司と結婚して跡継ぎを産めば私のお役目は終わり。
でも、本当は『麗奈を愛しているから』って言ってほしい…
心の奥底で、昔の父親に…笑ってたあの頃のお父さんに戻ってほしいって願ってる自分がいる。
「さ、早く帰って元気な姿をトミさんに見せてあげて下さい」
おじさんはそう言って車に駆け寄り後部座席のドアを開けてくれた。
私は素直に車に乗り込み、革製のシートに身を埋める。
車は霊園を出た後、丘を降り国道に入る。
夕方まで会長と一緒にいた海岸は、薄暗くて殆ど何も見えない。
海面に半月の光が反射してキラキラと輝いていた。

