あの事故から抜け出せてないのは俺だけなのかもしれない。 親父の墓であの男を見るまでは、これで俺も抜け出せるって思ってたのに… ふと谷本麗奈を拒んだ時のあの悲しそうな顔が頭に浮かんだ。 俺の中であの男の存在が消えない限り、あいつのこときっとまた傷付けてしまう。 「誰よりも側にいたいだなんて笑える……一番近くにいちゃいけない男のくせにな」 俺のその言葉を聞いていたかのようなタイミングで隣りの家の犬が吠え出した。 まるで俺の置かれてる状況を嘲笑うかのように。