パチッ。
軽快な電気のボタンの音が静寂な部屋に響き、和室は明るくなった。
「電気ぐらいつけなさいよ」
母さんは電気を付けると俺から少し離れた所に腰を下ろした。
「大和、寝た?」
「ぐっすり。寝る前に明日楽しみだってはしゃいでたわよ」
「ふふ」と笑う母さんの表情からは母親の愛情が感じられた。
それと同時に、この五年ですっかり皺が増えて一気に歳を取った気がする。
当時、まだ小さい子供四人を一人で育てていくと覚悟した時、母さんはどれだけ不安だったんだろうか。
親父が死んでから朝から晩まで働いてくれた母さんは、一言も弱音なんて吐かなかった。
俺達を不安にさせないように、ずっとこの愛情に満ち溢れた笑顔を向けてくれていた。
「母さんは…再婚とか考えたことないの?」
俺は親父の遺影を見つめながら言った。
母さんの表情は俺からは見えないけど、息を呑む気配を感じた。

