君のいる世界





「ホント?約束だよ?」



「ああ、約束だ。だから今日はもう寝な?」



「うん!」



大和は大きく頷いた後、母さんと一緒にリビングを出て行った。


ドアが閉まった途端、一気にリビングは静まり返る。


日中あんなに煩い家もこの時間になると寂しささえ覚える。




俺は用意されていたカレーライスとコップを持ち、リビングと繋がる和室にある親父の仏壇の前に腰を降ろした。


遺影の中の親父は今日も変わらずしわくちゃな顔をして笑っている。


仏壇には大盛りのカレーライスと缶ビールが供えられていた。





カチンッ!



「…乾杯」



俺は自分のコップを缶ビールに当てた。




「美味いな、母さんのカレーライスは」



親父に話しかけながらカレーライスを掬ったスプーンを次々に口に運ぶ。


息を吹きかけて冷ましながらじゃないと食べれないぐらい熱いカレーは、冷え切った俺の身体も心も温めてくれる。



「親父。今日、あの男に会ったよ……俺…やっぱりあいつのこと、許せない」



電気の付いてない和室は、リビングの灯りが少し入ってくるだけで薄暗い。