夕日は濃さを増し、海面がオレンジ色に染まる。
すぐ近くにある海岸沿いの国道を高校生が楽しそうに笑いながら自転車で走っていく。
誰かに見られる恥ずかしさでいっぱいなのに、この腕を振り払うことが出来ない。
それどころか、もっともっとと欲深い自分がいる。
私の中にこんな自分がいるなんて知らなかった…
「谷本、あのさ…「「きゃー!!見て見て」」
会長の言葉に被さるように甲高い声が海岸に響いた。
その瞬間ドキッと胸が大きく震え、私達はパッと一斉に離れる。
ちらっとその声の方を見ると地元の中学生のカップルだろうか、セーラー服の女の子と学ランの男の子が少し離れた所で手を繋いでこっちを見ていた。
女の子は手を繋いでない方の手で口を覆い、男の子は彼女の頭を軽く小突いている。
見ていて何とも微笑ましい二人。
きっと私達を見て大声を出した彼女に彼氏が突っ込みを入れているんだろうな。
隣りにいる会長は、いつか見た兄弟を見守る優しいお兄ちゃんの目で二人を眺めていた。
心臓がドキドキと煩い。
意地悪な会長も、甘い会長も、今みたいにお兄ちゃんの顔の会長もたまらなく好き。
気持ちを自覚した途端、どんどん“好き”が加速していく。
減速どころか、きっともう止まれない…

