君のいる世界





「……捕まえた」



会長は私の右肩に顎を乗せ、ギュッと抱き締める力を強めて耳元で吐息混じりに言った。


乱れた息がより一層艶っぽさを増し、鼓膜を麻痺させる。




「あ、あの…」



緊張で声が震え、上手く言葉が出てこない。


頬も耳も、首筋までもが熱い。




「ん?」



「…っ、離して…?」



「…無理。離さない……だけど」



会長はそう言葉を切ると、私の耳に唇を寄せた。



「どうしてもって言うなら離してやってもいいけど、どうする?」



そしてわざと息を吹き掛けながら低く掠れた声で囁いた。



「…っ!!」



…ずるい。


会長はわかってるんだ。


私が嫌って言わないこと…




私の…気持ちを。





“もう少し、このままでいて”



素直にそう言えればいいのに、恥ずかしさと少しの反抗心が邪魔をする。


私は言葉の代わりに、会長の腕にそっと両手を添えた。


会長は一瞬ビクッと肩を揺らした後、更に私を抱き寄せて首筋に顔を埋めた。


背中全体に会長の温もりと力強い鼓動を感じる。


次第に二人の鼓動が重なって、波音と共に繊細なハーモニーを奏でた。