校門を潜ると、いつものように生徒に囲まれた。
昨日の噂なんて最初っからなかったように、なんら代わりのない日常の光景。
佳菜子と顔を見合わせ苦笑いを浮かべながら、足を止めることなく人の群れを進んだ。
そして長い授業もようやく終わり、放課後。
一日切っていた携帯の電源を入れた。
待受画面には無数の着信履歴。
康君や家の番号が画面に収まり切らないほど並んでいる。
私は躊躇いつつも慣れた手つきで消去した。
何も言わないで勝手に出て来たのは申し訳なく思ってるけど…
やっぱり昨日のことは簡単に許せない。
いくら康君でも…
あれじゃこの前琴音ちゃんをホテルに連れ込もうとした男の人達と変わらないじゃない…
私は携帯を鞄の奥底に押し込んだ。
「「きゃー!!柳田様よー!」」
突然、複数の女子が窓に身を乗り出して黄色い声を上げた。
柳田…?
「…っ!!まさか!」
私は空いてる窓から他の女子と同じように身を乗り出した。

