「そんなことがあったなら尚更一人で通わせられない。今度は麗奈が何かされるかもしれないだろう?」
「わ、私は大丈夫だよ。少しだけど護身術ぐらい…」
「大丈夫じゃない。大人数で囲まれたら麗奈なんて簡単にやられる。何のために俺が今まで送り迎えしていたかわかるか?」
少し齧ったぐらいの護身術で男の力や大人数に勝てるわけがないだろう…
それに、麗奈を守る為に俺がいるのに。
「何のためって…あの人が言い出したことでしょ?」
案の定、麗奈は意味がわからないとでも言うかのようなキョトンとした表情を浮かべる。
それが凄く可愛くてめちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られた。
俺は麗奈に7年前の誘拐事件について話してやった。
麗奈はやっぱり何も覚えてない様子だった。
正直、あの頃はずっと自分の将来について迷っていた。
うちは代々谷本財閥に仕えてきたから、この家に生まれた以上俺もその道を進むべきなんだけど…
俺は本当にそれでいいのか。
決められた道をただ歩くだけで後悔しないのか。
その答えはいくら考えても出てこなかった。

