君のいる世界





「別に何もないよ?」



「…ふ。それで誤魔化してるつもり?そうならちゃんと目を見て話せよ」



麗奈は昔から嘘が下手だった。


嘘をつくとき、声が一オクターブ上がるのを本人は気付いているのだろうか。


本当に素直な奴。




俺は何も言わない麗奈の両肩を掴み振り向かせた。


視線がぶつかり合う。



「理由、言えない?」



「……」



麗奈は逃げようと身体に力を入れる。


だけど絶対に逃がさない。




「…言わないならキス、するぞ?」



今日の俺は少し…いや、だいぶおかしい。


あのキスマークを見つけるまでちゃんと距離を保っていられたのに、今は自分をコントロール出来ない。




「…ふぇ?」



麗奈は麗奈で可愛い間抜けな声を発して、無意識に俺を煽ってくる。




「ちょっ…康君!待っ…」



それで抵抗してるつもりなのかよ。


そんな目して、逆効果だって知らないのか…?