君のいる世界





「…あの人が納得しなくても、私は明日から電車で通う」



麗奈は俺の凄みに一瞬怖気づくもすぐに気を取り直し、瞬きもせずに俺の目をジッと見てくる。



「…はぁ。本当、麗奈は昔からそうだな。決めたことは絶対に曲げない。まあ、そこが良い所なんだけど」



こうなると麗奈もまた、おじさんに似て折れないんだよな。


思わず笑みが零れてしまった。




「こ、康君…?」



麗奈は驚いた表情を浮かべる。


そういえば俺、久しぶりに麗奈の前で名前で呼んだかも…


執事になってお嬢様としか呼ばなくなったから。



「…ああ。もう終業時間だから。これからはただの幼馴染だろ?」



時計は18時を指している。


いつもは残業なんだけど、今日は良しとしよう。


それより…



「どうして急に電車通学することにしたんだ?納得いく説明しろよ。じゃないと明日も無理矢理車に乗せるからな」




俺は麗奈の隣りに腰を掛けた。


俺の重みでマットレスが沈み、肩が触れ合う。


それだけで身体が強張り、俺の全神経が肩に集中する。