その後の仕事は全く手に付かなかった。
そして就業時間間近、俺は麗奈の部屋に来ていた。
珍しく真剣な顔で呼び出された為、変に構えてしまう。
それに夕方学園に迎えに行った時から、麗奈は俺と目を合わせようともしなかった。
俺としても今はその方が好都合だけど。
重い沈黙を破ったのは麗奈だった。
「康君…あのね。明日から私、電車通学しようと思うの。だから登下校の送り迎えは今後しなくていいから」
…は?
一瞬、意味がわからなかった。
電車通学だと?
「…それは社長のご命令でしょうか?」
「う、ううん…私の独断だけど…」
「社長のご命令でなければお受け出来ません」
「ち、父には今日帰ってきたら話すつもり。だから…」
「社長は納得されないと思いますよ」
おじさんは麗奈を極力一人にさせたくないらしかった。
あんな事件があったんだから当然のこと。
それに俺だって反対だ。

