「…会えるよ…絶対に会える」
大人の事情で子供から親を引き離してしまうなんて、許されるのだろうか。
俺は拳をギュッと握った。
「うわーん!!…っお母さーん!!」
麗奈は布団から飛び出し俺に抱きついて来た。
まだ小学3年生の幼い子供。
俺は麗奈が泣き止むまで小さい背中と柔らかい髪の毛をただただ撫で続けた。
それから数日経っても、麗奈に笑顔は戻らなかった。
そんなある日の夕方、親父から連絡が入った。
「康介!…麗奈ちゃんが誘拐された!!」
どうしてこんなにも悪いことは重なってやってくるんだろうか。
麗奈は小学校からの下校途中、何者かに連れ去られ、犯人から一度連絡があったらしい。
俺は講義中にも関わらず、大学を飛び出した。
空はどんよりとした厚手の雲に覆われ、嫌な天気だった。
どれぐらい探し回っただろうか。
闇雲に探し回っても意味がないことぐらいわかってる。
だけどジッとしてなんかいられなかった。

