「あともう一つ。男とあんま二人きりになるなよ?」
「へ?」
「男は狼だから」
狼?何の事?
急な話の展開についていけない。
私の頭の中をはてなマークがぐるぐる回る。
「…ったく、無自覚過ぎんだろ。これだから安心出来ないんだ…」
その瞬間、視界がぐるりと回った。
ギシッというスプリングの音と同時に背中に柔らかい布団があたる。
康君が私に覆い被さるように顔の横に手を付き、私を見降ろしてくる。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
康君にベッドの上に押し倒されて…それで…
「…っ!!」
今置かれている状況を把握した途端、胸の鼓動が急加速を始めた。
部屋の電気が康君の頭越しで白く光りを放ち、逆光で康君の表情がわからない。
「こ、康君…どうしちゃったの?」
緊張と焦りで上手い事言葉が出てこない。
「…キスマークつける間柄なら、もうキスの一つや二つしてるんだろう?」
ドキッと大きく心臓が揺れた。
今日生徒会室で会長としたキスが頭の中に蘇る。
首から耳まで一気に熱を帯びていき、思わず康君から視線を逸らした。

